海が誕生した時代の地球には多量の二酸化炭素CO2の大気があった。太陽の活動が現在とあまり変わりがないと仮定すると太陽風の速度は 350~700km/s です。太陽から放出される水素イオンの量は毎秒109kg/秒である。 太陽から約 1.5×108km 離れた地球の公転軌道の地点 を半径とする球体の表面積は2.83 x1023m2です。 地球の断面はS地球= 1.28 x1014m2です。 その比率は(1: (2.2 x109) ですので、地球に到達する太陽風のH+の量は毎秒0.45kgで、1日には39.3tです。原始地球の大気は太陽風によって還元性気体でした。
   

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4.5 地球上のすべての生物の膜を構成した分子の合成

  [太陽風の高速H+と原始地球のCO2分子の衝突による化学反応]   


図.13 原始大気のCO2と太陽風によって細胞膜を形成した分子の合成

 図.13 に原始地球の大気中のCO2と太陽風のH+Lとの衝突によって有機分子が生成された様子を示します。 他方、生命の起源に関するユーリ・ミラーは原始地球の大気組成としてメタン、水素、アンモニアを用いて生命発生の最初の過程の実験をおこないました。 その後の研究では、最初の生命が誕生した時の大気はCO2や NOxなどの酸化性気体が主成分であったと考えられるようになりました。 しかし、ユーリー-ミラーの実験に用いた分子は太陽風のH+と原始地球の大気のCO2の衝突により生成されます。

[原始地球の水面で組織された炭化水素分子の膜]
 原始の大気のCO2に高速のH+が衝突して水ト炭化水素が生成されます。炭素の数が少ない炭化水素の分子は地表で蒸発して上空に留まりますが、地表の温度より融点が低く沸点 が高い炭素原子数が多い炭化水素の分子は液体として地表に存在します。
 表1に示すようにヘキサデカンおよびオクタデカンは原始の地球環境で液体の状態で存在し、疎水性で水に溶けず、比重が1より小さいので水面に広がっていました。 炭素原子が16か18個の直鎖状の炭化水素の分子が疎水結合により水面に集まりした。 そして、殆どの生物の細胞膜は炭素原子が16か18個の炭化水素を主成分として構成されました。

    表2 炭素原子が14, 16, 18, 20個の直鎖状の炭化水素分子の物理特性

 分子式   融点 [℃]    沸点 [℃]    比重 [20℃]
 テトラデカン  C14H30    4 to 6    253~257   0.76
 ヘキサデカン  C16H34    18    287  0.773~0.776 
 オクタデカン  C18H38     28~30     317   0.777
 エイコサン    C20H42    36~38      343.1   0.7886









 表 2 に生物の細胞膜を構成する主成分の 炭素原子が16か18個の直鎖状の炭化水素であったことから、この分子が液体状態を保ち続けた原始地球の地表の温度範囲が推定できます。


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